ツシマヒラタクワガタ

昆虫採集をめぐる観光活用と葛藤、これからのカタチ

2026/08/06対馬の自然

 こんにちは、光るキノコやホタルの時期が過ぎ、いまはカブトムシ・クワガタの見回りをしている「夜の徘徊者」ことエヌです。
(怪しい者じゃないよ)

ツシマヒラタクワガタ、その魅力と課題

 対馬にはいろんな観光資源がありますが、なかでも日本最大(80mm超!)を誇る「ツシマヒラタクワガタ」は、全国の子どもたちや愛好者にとっての憧れの存在です。

 観光協会の職員としてもこの魅力を発信すべく、「ダーウィンが来た! どれが最強?クワガタ列島大調査」(NHK・2023年7月放送)をはじめとする取材協力や、個人・協会のブログ・SNSでの情報発信(2019年~)を続けてきました。

 その甲斐もあり、島内外で対馬の生き物の面白さが広く知られるようになり、生物ライター・平坂寛さんの全面協力による生き物観察会も毎回大盛況で、確かな手応えを感じています。 

 ・・・が、実はツシマヒラタクワガタの知名度が高まるにつれ、自然を「楽しむこと」と「守ること」の間で葛藤も大きくなってきました。

昆虫減少の背景と、現場で起きている課題

 現在、世界的に昆虫の絶滅や減少が危惧されています。

 生息地の開発・破壊、コンクリート三面張りなどの工法、耕作放棄地の増加、湿地の草原化など要因はさまざまですが、近年は、インターネット販売を目的とする乱獲も目立ちます。

 生き物は地域ごとに長い年月をかけて生態系(競争・共進化)を築いており、その一部を移動させると、天敵不在の環境で暴走的に増殖したり(その結果、在来種を絶滅に追い込んだり)、人にも感染するウイルスが蔓延したりします。
 飼いきれなくなった生き物を別の場所に放すと、遺伝子攪乱や在来種の駆逐、感染症拡大などのリスクを引き起こします。

 「生物多様性」は、地球規模の遠いテーマに思えますが、実は「自分が住む地域の生態系を守ることが一番大事」というローカルで身近な問題なのです。

夏休みの切実なお問合せと苦い経験

 夏が近づくと、全国の親御さんから熱心なお問い合わせをいただきます。

 インターネット上の「対馬ではいくらでも見られる」という情報を信じてノウハウなしに来島し、結局、収穫ゼロで帰ってしまうご家族も少なくないようです。

 過去には、私有林をもつ地元の方にご協力いただき、観光客(親子連れ)への紹介を試みたこともありましたが、一部のマナー違反者(成人男性。クワガタを落とすために木を強く蹴る、樹皮をはぐ、挨拶すらしないなど)が発生し、受け入れを断念せざるを得なくなった苦い経験もあります。
 
 夏休みの家族旅行の需要に応えつつ、地域の秩序・自然を守るために、民宿やガイド向けの講習会を開催したり、試験的にガイドを実施するなど、葛藤と試行の受皿づくりは続きます。

自然を守るためには、まずは楽しむこと

 トラブルを防ぐだけなら、条令ですべて採集禁止にするのが一番簡単かもしれません。

 しかし、環境の変化や破壊に気付けるのは、日頃から自然に関心を持ち、観察している人だけです。
 幼少期に自然と触れ合わず、その価値を知らない無関心な大人が増えてしまえば、私たちの暮らしの土台である自然環境が壊れていくことにも気づかず、座して破滅を待つことになりかねません。

 子どもたちが生きていく未来のためにも、「ワクワクする自然体験」は絶対に必要だと思うのです。

 また、「自然の保全」にはどうしてもお金と人手が必要です。
 すべて税金で賄い続けるのは現実的ではなく、地域内外の協力を得られる「観光」をその仕組みに組みこめれば、それが理想的なカタチかな、と思っています。

「あそうベイパーク」のリニューアルとこれから

 2026年7月4日(土)、「あそうベイパーク」キャンプ場に管理棟が新築され、リニューアル・オープンしました!

>> あそうベイパークキャンプ場リニューアルオープンのお知らせ(対馬市WEBサイト 2026/6/22)

 これを記念して、7月25日(土)に「平坂寛と生き物の夜 in 対馬」を開催します!
 平坂さんのスライド&トークで生き物の魅力にどっぷり浸かった後、夜の森を一緒に歩くイベントです。

(平坂さんは沖縄在住で、7月に観察会を開催するため毎年台風が心配なのですが、昨日、無事到着されました!)

 カブトムシやクワガタ、そしてツシマヤマネコなどが生息しやすい場所は、実は遠く離れた原始林ではなく「里山」だったりします。

 例えば、シイタケ栽培の原木(廃木)は、クワガタの格好の産卵場になります。
 生き物と人の暮らし・産業は、深く結びついているのです。

自然再興(ネイチャーポジティブ)へ

 2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で名誉大使を務めたのは、先日対馬で素晴らしい凱旋コンサートを開催していただいた 歌手MISIAさん でした。

 そして2022年のCOP15では、自然環境をただ「保全」するだけではなく、良い方向に反転させて増やす「ネイチャーポジティブ(自然再興)」という新しい潮流が提言されています。

 対馬の豊かな自然を「減らさない」だけではなく、「より豊かにして次世代につなぐ」という持続可能な観光のカタチは、対馬市のエコツーリズムの取り組みとも合致します。
 昆虫好きの子どもたちの需要に応えつつ、「生き物を育み、増やすための環境整備」を、一緒に楽しみつつ進めていけたら、と思っています。

 (長い独り言にお付き合いいただき、ありがとうございましたー!)