夏の想い出・歴史編「神功皇后から戦艦・仏像まで」

2026/09/04対馬の歴史

 こんにちは、9月を迎え、自然系事業のまとめと歴史系事業の準備を進めているエヌです。
 さて、7月下旬~8月のできごとを振り返るプレイバック記事第2弾「歴史編」をお届けします!

1.観光地・神社・史跡研修

 (一社)対馬観光物産協会には日々、マニアックな問い合わせが寄せられます(私が偏った情報ばかり発信しているのも原因ですけどね)。
 そこで7月下旬、スタッフのリクエストに応えて神社・史跡の現地確認・研修を行いました。

今回の研修ルート

  1. 観光情報館 ふれあい処つしま
  2. 雷神社
  3. 神功皇后の腰掛石
  4. 多久頭魂神社
  5. 安徳天皇佐須陵墓参考地
  6. 銀山上神社
  7. ひじきだん
  8. 宗助国公・御首塚
  9. 法清寺(宗助国公・お胴塚)
  10. 銀山神社(宗助国公・太刀塚)
  11. 最澄記念碑(伝教大師入唐帰国着船之地)
  12. 雷命神社
  13. 太祝詞神社
  14. 芋崎入口(ポサドニック号事件)
  15. 観光情報館 ふれあい処つしま

>> 研修先Googleマップ 1~10
>> 研修先Googleマップ 11~15

(2)雷(いかづち)神社

 対馬南部・厳原町豆酘(いづはらまち つつ)地区に伝来する古代の占い「亀卜」(きぼく)を行う神社です。
 亀卜は大嘗祭などで宮内庁でも催行される秘儀(非公開)で、その歴史の古さには驚嘆します。

(3)神功(じんぐう)皇后の腰掛岩

 「古事記」に登場する神功皇后が朝鮮出兵に際し、対馬に上陸して腰を掛けたと伝わる岩です。
 勇ましい神功皇后とその子・応神天皇は、源氏など武士の守り神となり、全国の八幡宮に祭られています。
 外国の脅威に接する北部九州・壱岐・対馬では特に篤く信仰され、対馬にも関連伝承地がたくさんあります。

(4)田道間守(たじまもり)と橘

 古事記・日本書紀に登場する田道間守は、垂仁天皇の命により「不老不死の実」を求めて「常世の国」に渡海し、それを得て帰還するも、天皇はすでに崩御しており、嘆き悲しんで亡くなった、とされる人物です。

 不老不死の実=橘とされ、また司馬遼太郎さんの「街道をゆく28 耽羅紀行」など、「常世の国」=古代・耽羅国(現在の済州島)という説があり、対馬を経て済州島まで探検したのかもしれません。

 古代の日本では、菓子=果物や木の実であり、田道間守は菓子職人の守り神として信仰されるようになりました。

(5)安徳天皇御陵墓参考地

 源平の抗争の最終局面「壇ノ浦の合戦」において、二位の尼は孫でもある幼帝・安徳帝に「波の下にも都がございます」と語りかけ、ともに下関(山口県)の波間に沈んだ、とされます。

 悲劇の幼帝は実は生きていた、という伝説は、平家の落人伝承ともに九州や四国に広がっていき、厳原町久根田舎には宮内庁の正式な参考陵墓があります。

 この伝説はのちに、対馬島主・藩主となる宗氏の始祖伝承と結びついていきます。

(6)銀山上神社

 安徳天皇御陵墓を守り続けてきた久根田舎(くねいなか)の集落内に鎮座しています。
 いつもは参道がコケに覆われてよい雰囲気なのですが、今年は雨が少なすぎて乾燥気味。

 祭神は安徳天皇および対馬固有の諸黒神(もろくろがみ)。
 日本最初の銀山(日本書紀)である「対馬銀山」で発生した守り神のようです。

(7~10)ひじきだん(蒙古襲来地)・元寇関連地

 「ブラタモリ」(2022年)で一般的に知られるようになった「ひじきだん」は、元寇の際、蒙古軍を迎え撃った宗助国が陣を構えたとされる丘です。
 現在は金毘羅神社で、小茂田浜(佐須浦)を一望できます。

 この後、宗助国公のお首塚、お胴塚(法清寺)、太刀塚(銀山神社)など元寇関連地を巡りました。

(11)伝教大師入唐帰国着船之地

 厳原町阿連(あれ)には、伝教大師・最澄さんの着船記念碑があります。

 遣隋使と遣唐使(初期)は壱岐・対馬を経由しますが、最澄さん・空海さんは遣唐使の後期ルート(五島から東シナ海直行)で渡唐します。

 その帰路、最澄さんの船は遭難して対馬に漂着。無事に帰国を果たし、日本に天台宗が広まることになります。

(12)神功皇后と雷大臣(イカツオミ)の足跡

 記念碑のすぐ横に、オヒデリ様神事の舞台のひとつ、雷命神社が鎮座しています。

 神功皇后には、武内 宿禰(タケノウチ スクネ、賢者)、海神 磯良(イソラ、水先案内人)、雷大臣(イカツオミ、占い師)などの強力な仲間がおり、ロールプレイングゲームのようにパーティーを組んで行動していました。

 対馬に亀卜を伝えたとされる雷大臣の足跡は、豆酘から阿連へ、そして美津島町加志(みつしままち かし)へとつながっていきます。

(13)太祝詞(ふとのりと)神社

 対馬を代表する名神6社のひとつで、境内には雷大臣の墓所があります。

 現地を歩くと、点であったひとつひとつの史跡が、物語としてつながっていく快感を得られます(私だけ?)。

(14)大河ドラマ「逆賊の幕臣」ゆかりの地

 2027年大河ドラマ「逆賊の幕臣」の主人公・小栗忠順(おぐりただまさ)が、ロシア軍艦ポサドニック号の艦長ビリリョフと緊迫した交渉を繰り広げた舞台・芋崎。

 これから注目を集めそうなんですが、道が狭く、駐車場がないなど、アクセスが課題です。

2.文化財巡視

 市内の文化財の巡視を担当しており、6ヶ所×年3回、文化財のチェックを行っています。

 自然系である白嶽・龍良山を除く4ヶ所をご紹介します。

清水山城(しみずやまじょう)

 清水山は、神功皇后(また登場)が朝鮮半島からの凱旋時に神威を感じてみずから祭ったと伝わる神山です。
 ふもとには厳原八幡宮が鎮座し、城下町・厳原港を一望できます。

 豊臣秀吉の文禄慶長の役(朝鮮出兵)に際して、この地に「清水山城」が築かれました。
 聖地を城に作り変えることで絶大な権勢を示す目的もあったのでしょうが、この地に立つと、秀吉の辞世の句を思い出します。

 露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢

(露のように儚く生まれ、露のように消えようとしている私の生涯だ。栄華を極めた日々も、まさに夢の中の夢のように儚いものだった)

 なぜか、「浪速のことも」と覚えており、そちらの方が好きだったんですけどねー。

府中(ふちゅう)の石垣

 厳原町中心部は、宗氏10万石の城下町です。
 度重なる大火から町を守るための火切石(防火壁)がよく残っています。

 旧金石城の石垣、対馬博物館、金石城の櫓門など、徒歩でじっくり歴史散策を楽しめます。

お船江(ふなえ)

 江戸時代の対馬藩の船着場です。
 造船・修理だけでなく、船底についた貝類の除去など、日々のメンテナンスが大切だったんでしょうね。

対馬藩主 宗氏菩提寺・万松院(ばんしょういん)

 宗氏第10代・宗 貞国および第19代(初代藩主)・宗 義智以降の歴代藩主と一族が眠る菩提寺です。

 本堂には、皇室からいただいた「万松精舎」の扁額、徳川将軍家の金箔の大位牌、朝鮮王朝から贈られた仏具「三具足」があり、墓所の巨大な墓石や大杉が厳かな雰囲気を漂わせています。

3.狛犬調査

 相変わらず狛犬調査も続けております。(しつこい?)

志賀神社(鹿ノ島)の狛犬

 7月12日、無人島「鹿ノ島」にシーカヤックで上陸し、「志賀神社」で新たな狛犬を発見しました。

九谷焼の狛犬

 豊玉町で、対馬では珍しい九谷焼を含め5体の狛犬を確認しました。

内園神社(内野神社)の狛犬

 小さな橋が壊れて(?)陸路ではたどり着けない内園神社(内野神社とも。上対馬町浜久須)で、新たに狛犬を2体確認しました。 

 うーん、材質が砂岩と花崗岩に見えるし、どちらも阿形(口を開けている)なので、もともとは別の対だったものを組み合わせているようです。

 この7月は新たに9体(4組+1体)の狛犬を確認しました。

「対馬狛犬図鑑」読売新聞&Yahoo!ニュース掲載

 地元の読売新聞記者Sさんから取材を受けていたのですが、8/30(日)の誌面で紹介され、Yahoo!ニュースに転載されました。

関連記事 神社の「狛犬」一見どれも同じように見えるが…対馬市の110の神社、個性あふれる272体を「図鑑」に

 同冊子は、(一社)対馬観光物産協会で無料配布・郵送を行っているので、ご希望の方はお気軽にご請求ください。

4.戦争、軍艦、大砲、交流と攻防の最前線

 古代山城「金田城」(7世紀)から豊砲台(昭和)まで、対馬はつねに外国との交流と攻防の最前線でした。

 来年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」を起点に、

  • 「逆賊の幕臣」(幕末のポサドニック号事件、対馬とロシアの因縁)
  • 「坂の上の雲」(対馬の要塞化、鈴木貫太郎の対馬着任、対馬島民のロシア兵救助)
  • 「日本のいちばん長い日」(戦時体制最後の首相・鈴木貫太郎の終戦の日の1日を描く)

を結ぶ、戦争と平和をめぐる対馬の物語を組み立てようと考えています。

(リメイク版「~長い日」で、二・二六事件を起こした青年将校を演じているのは、「逆賊~」の主人公を演じる松坂桃李さんなんですよねー。キャスト面でも運命的なつながりを感じます!)

 幕末のポウハタン号(小栗乗船)や咸臨丸(勝海舟乗船)、日露戦争(日本海海戦)の旗艦・三笠、最終形態である戦艦・大和について調べたり。

 巡洋戦艦・赤城の主砲が、ワシントン軍縮条約により対馬の豊砲台に転用されているので、大砲について調べたり。

 その過程で、とんでもないミリタリー同人誌を発見!
(サークル「さざなみ壊変」、著者は「かずぴー」氏、2025年12月発行)

 対馬要塞・壱岐要塞を3次元測量するなど、徹底的なこだわりに満ちています。
 昭和期の砲台(軍艦の主砲を転用)が中心ですが、写真・図面が多用され、幕末・明治期から昭和期にいたる「対馬要塞の興亡史」も非常にわかりやすいです。

 なお、2024年7月から通行止めだった豊砲台は、2026年7月23日から通行が再開されました!

5.博物館・展示など

九州国立博物館「九州渡来仏展」

 2026年7月7日(火)~8月30日(日)まで開催されていた「九州渡来仏展」の最終日に滑りこみました!

 対馬には130体以上の渡来仏が伝来していますが、今回の展示には対馬ゆかりの名宝を中心に40件が集結。

  • 窃盗団によって持ち出され、2025年に無事帰還した観音寺の「観音菩薩坐像」(図録表紙!)
  • 渡来仏の傑作とされる黒瀬観音堂の「如来坐像」(裏表紙!)
  • 30年ぶりの公開となる453年の「北魏仏」(日本最古!)

 かつて対馬で仏像の調査・研究を行い、現在は九博に勤務されている大澤信さんの情熱が結実した素晴らしい展示でした。

 購入した図録(右は「氷河期展」)にしっかり目を通し、今後の情報発信やガイド(あるいは趣味)に活かしたいと思います!

6.そして9月へ

 自然も歴史も盛りだくさんだった夏が過ぎ、9月30日(水)には今年度の対馬楽講座を開講します。

 ラインナップは、大河ドラマ、野鳥、地質、昆虫、砲台、幕末の対馬とポサドニック号事件などなど。

 正式な発表まで、しばしお待ちください。

 それでは、また!

 あ、自然編はこちら!