始まりの地 芋崎(いもざき)砲台
芋崎(いもざき)砲台について
対馬の中央に広がる浅茅湾(あそうわん)に突き出した半島・芋崎(いもざき)は、幕末にロシア軍艦により半年間占拠された「ロシア軍艦対馬占領事件(ポサドニック号事件)」の舞台であり、日露戦争の伏線ともなる、日本(対馬)とロシアの因縁の始まりの地でもあります。
この地に建造された芋崎砲台は、日清戦争に備えて建造された対馬最初期の4つの砲台(他は温江砲台・大石浦砲台・大平(低)砲台)の1つで、第一期(明治20年代・日清戦争)と第二期(明治30年代・日露戦争)の特徴をあわせ持つ珍しい型式です。
基本情報
名称
芋崎(いもざき)砲台
所在地
長崎県対馬市美津島町昼ヶ浦、浅茅(あそう)湾内の半島部 >>Googleマップ
起工
明治20年(1887年)4月
竣工
明治21年(1888年)9月
備砲
28㎝榴弾砲×4門
アクセス
観光情報館ふれあい処つしま~登山口まで20.2km(車移動可)
登山口~芋崎砲台まで2.2km(徒歩のみ)
所要時間など
観光情報館ふれあい処つしま((一社)対馬観光物産協会)
↓ 車で30分(20.2km)
美津島町昼ヶ浦の登山口(駐車)
↓ 徒歩60分(2.2km)
芋崎砲台 ←(往復1km徒歩1時間)→ ロシア軍艦泊留地跡(ロシアの井戸)
↓ 徒歩60分(2.2km)
美津島町昼ヶ浦(乗車)
↓ 車で30分(20.2km)
観光情報館ふれあい処つしま((一社)対馬観光物産協会)
※上記所要時間は、休憩・見学をのぞく移動時間です。見学時間を適宜追加してください。
※(一社)対馬観光物産協会は、「観光情報館ふれあい処つしま」(長崎県対馬市厳原町今屋敷672番地1)にあり、厳原港から車で北に3分、対馬空港からは車で南に20分です。
芋崎砲台への道
観光情報館ふれあい処つしま
観光情報の提供、パンフレットの請求はこちらまで。
【所在地】 〒817-0021
長崎県対馬市厳原町今屋敷672番地1
観光情報館ふれあい処つしま(一般社団法人 対馬観光物産協会)
【電話】 0920-52-1566
【アクセス】 厳原港から車で3分(徒歩10分)、対馬空港から車で20分。
登山口(芋崎砲台への入口)
美津島町鶏知(けち)から~同町昼ヶ浦に向かう途中、左手に案内板が見えます。
駐車スペースはあまりないのでご注意を。
ロシア軍艦泊留地案内板
大平砲台(低・高)、芋崎砲台、泊留地(ロシアの井戸)の位置関係が記されています。
芋崎砲台に行く場合でも、泊留地を目指せばOK。
途中の軍道の様子
砲台への道はこんな感じ。
途中に、石材・レンガを使った構造物があります。
分岐点
芋崎砲台まで20m、ロシア軍艦泊留地(ロシアの井戸)まで500m。まずは砲台を目指します。
芋崎砲台
石造りの砲台跡が見えてきました。
濾過式の井戸です。
第一期の砲弾弾薬庫は石造りで堅牢。
入口の上部に、起工・竣工の日付、責任者名が刻まれた銘板があります。
「明治20年4月起工、明治21年9月竣工、工役長 陸軍工兵中尉 時尾善三郎」
内部はカマボコ型で、防湿のため漆喰が塗られています。通気口は長方形タイプ。
28cm榴弾砲は通常2門1セットですが、芋崎砲台では1門・2門・1門という珍しい配置になっています。
また他の砲台の砲床(砲座の土台)は堅硬な花崗岩ですが、ここでは強度に問題がありそうなレンガが使われています。
第一期→第二期の砲台の発達過程を感じさせます。
第二期の弾薬庫はレンガ造りで、半地下式です。
弾薬庫入口と前面の石の壁の間隔が狭く、全国的にはこちらが標準のようですが、対馬の他の砲台ではこの間隔が4m以上あるなど広くなっていきます。
内部にもびっしりレンガが使われています。
観測所。(観測機を設置するための)中央にあるはずの円柱あるいは3本の石柱がありません。
ちょっと場所がわかりにくいのですが、竹藪の奥に進むと・・・
レンガの弾薬庫と、
3本石柱タイプの観測所がありました。
ロシア軍艦泊留地へ
分岐点に戻り、ロシアの井戸を目指します。(悪路なので要注意)
海岸にある「ロシア軍掘削井戸」。
海岸部のロシア軍艦泊留地跡には、「文久元年魯寇之跡」(昭和3年2月建立)の石碑があります。
海岸部にも砲台関係の石材・レンガの構造物の跡が残されています。
刻印のあるレンガを発見。「三石耐火煉瓦株式会社」と読めます。
明治25年創業、現在も岡山県備前市にある老舗のレンガ製造会社のようです。
高射砲陣地・豊島部隊
さて、ロシアの井戸から砲台跡に戻り、斜面を登ると石碑がありました。
「大東亜戦守備之地 豊島部隊 昭和十七年秋」の文字が読み取れます。
芋崎には昭和16~17年にかけて高射砲座部隊が配置されていました。
のちに長崎の金比羅山に移転し、原爆により多くの隊員が命を落としました。
芋崎には、幕末(ポサドニック号事件)から日清・日露、そして太平洋戦争まで、対馬と戦争に関する数奇な歴史が刻まれていたのです。
オプションルート・芋崎半島を目指して
さて、番外編。芋崎半島の道なき道を進むと・・・。
レンガ造りの探照灯(サーチライト)が!
内部はこんな感じ。
海防と陸防が仲良く並んでいます。
海水の透明度が高く、景観も楽しめます。