対馬楽講座 ~地質編~
「対馬楽講座 ~地質編~」について
※本ページは、エヌの世界ブログをページ化したものです。
「化石が語る対馬の物語」について(ブログ2019.02.25)
こんにちは、昨日、今年の花粉症が始まったエヌです。あー(>_<;)
さて、昨年夏から秋にかけて開催し、好評を博した「対馬楽(つしまがく)講座~自然編~」(延べ受講者367名)ですが、今年度ファイナルの講座を開催します!
これまで数年にわたり、対馬の歴史や自然などをテーマに講座を開催してきましたが、ファイナルのテーマは・・・。
「化石(地質)」(シブいっ!!)
国境の島・対馬は、魏志倭人伝以来の悠久の歴史と、ツシマヤマネコに代表される多様な自然に恵まれていますが、すべての基盤となっているのが「大地」。
我々がいつも歩いているこの島の大地がどうやって誕生し、現在にいたったのか、興味ないですか? (ありますよね?!)
対馬の基盤の地質は、海底に降り積もった砂や泥からなる堆積岩で、
対州層群(たいしゅうそうぐん)
と呼ばれています。
その厚みは5km以上(上端・下端は不明)で、数百万年(諸説あり)の時をかけて堆積し、それが地表に現れたものです。
さらに!(興奮っ)
現在、対馬海峡の平均水深は約90~100m(最大水深は約230m)ですが、島内で深海性(水深500m以上!)の貝の化石が発見されており、
対馬の大地はかつて、深い海の底であった
ことを示唆しています。
すごくないですかっ?!!
深海といえば、マッコウクジラとかマリンスノーとか、「深海クリーム」とか「ま水ストロー」とか、ドラえもん世代(第4巻5話「海底ハイキング」)にはたまらないあれですよ!!
海の底に! 泥や砂がドバーッと堆積して、それがグニャーと曲がったり! ザーッと流れたり! ズガーン!と隆起して、今の対馬ができたんです!
(擬音はイメージです)
ふー(>_<;)
講師は、「(株)親和テクノ」の青木隆弘さん。
長崎・佐賀を拠点に、調査・測量設計の建設コンサルタント事業から施工まで行う総合建設業者の技術者、地質調査のスペシャリストで、今回は「化石」という切り口で、対馬地質の形成の謎について、語っていただきます。
故・國分英俊先生とのお付き合いもあり、今回の講師をお願いしたところ、気持ちよく受けていただきました<(_ _)>
翌日にはフィールドワーク(現地見学会)も開催しますので、お楽しみに!!
対馬楽講座~自然編~スペシャル! 化石が語る対馬の物語
2019/3/16(土) 対馬楽講座「化石が語る対馬の物語」
【日 時】 平成31年3月16日(土) 19:30~21:00
【会 場】 対馬市交流センター3階大会議室(対馬市厳原町今屋敷661-3)
【講 座】 化石が語る対馬の物語 ~地球を食っていた二枚貝の謎~
【講 師】 株式会社親和テクノ 青木 隆弘
【参加料】 無料
【定 員】 100名(先着)
2019/3/17(日) 地層フィールドワーク(現地観察会)
【日 時】 平成31年3月17日(日) 9:00~14:00
【行 程】 ふれあい処つしま~小茂田~上槻~(豆酘)~ふれあい処つしま
(各自、自家用車で移動しながら、地層・地質を観察します。動きやすい服装、リュック、手袋(軍手)、弁当・飲料持参でご参加ください)
【主 催】 一般社団法人 対馬観光物産協会
おまけ
昨年から今年にかけて、あちこち歩いた際の地層の写真です。
厳原町阿連(あれ)
豊玉町唐洲(からす)
上対馬町女連(うなつら)
豊玉町塩浜(しおはま)
塩浜のタフォニ・・・(-_-;)
「化石が語る対馬の物語」講座・現地観察会、新たなエコツアー(ブログ2019.03.21)
こんにちは、3/16~17(土・日)に開催した化石・地質講座の余韻がまだ抜けない局長Nです。
(お彼岸の墓参りのあとも、海辺を歩いて山を越え、ウニの生痕化石を見に行きました)
講座の受講者は59名、現地観察会は42名でした!
現地見学会のメインは、厳原町上槻(いづはらまちこうつき)での化石採掘。
対馬の地下に5キロ以上の厚さで堆積しているとされる対州層群(堆積岩)のうちもっとも古い年代(1800万年前~)の地層です。
講師の(株)親和テクノの青木隆弘さんの指導のもと、岩を割ると・・・淡水性の貝の化石が!
大人たちも夢中、というよりむしろ、大人たちが夢中(^^)
もうひとつの海岸の堆積岩を割ると、植物の化石が。
発見された化石の種類からみて、1800万年ほど前、このあたりは河川近く、あるいは湖の底のような、浅い淡水環境だったようです。
現地見学会のコースは、対馬市役所~東邦亜鉛(株)対州鉱山(化石見学)~厳原町上槻~鮎もどし自然公園~対馬市役所。
お昼は、鮎もどし自然公園(厳原町内山)で、花崗岩の一枚岩とホルンフェルス(堆積岩が花崗岩マグマの熱で変成した岩石)を観察しながら、お弁当をいただきました。
講師の青木隆弘さん、参加者の皆様、東邦亜鉛(株)対州鉱山管理事務所様、ありがとうございました!
スタッフの皆さん、お疲れ様でした<(_ _)>
おまけ
日本列島と対馬の形成
今回の講座・現地観察会の(個人的な)最大の発見は、対馬の95%を占める堆積岩・対州層群の面白さでした。
対州層群の下層・上槻では淡水性の貝の化石が、中層の鹿ノ浦(峰町)・吹崎(美津島町)などでは深海性の貝(化学合成生物群集)の化石が発見されています。
これは、対馬の大地のもとになった堆積環境が、淡水域~浅海~深海へと変化し、その後、地表まで隆起したことを意味しています。
最近の研究では、対州層群の形成期は1800万年前~1600万年前(かつては4600万年前~1400万年前と考えられていました)とされ、その時代の一大イベントといえば
日本列島の形成
です。
アジア大陸東端の陸塊が、対馬南西部を軸として時計回りに40~50度回転し、西日本の原形となったと考えられており、
日本列島を回転させるほどの巨大なエネルギーの支点・作用点が、対馬近海だったことになります。
(あ、wikipediaの「日本列島」にも、「西南日本は長崎県対馬南西部付近を中心に時計回りに40 – 50度回転し、」と書いてあります)
本来水平なはずの地層も、こうなるわな(-_-;) (写真は峰町志多賀の鹿ノ浦)
もうひとつ、対馬南部の「鮎もどし自然公園」には、花崗岩の一枚岩が露出しているのですが、これは1400万年前のものと考えられ、その時代の大事件といえば、
紀伊半島南部のカルデラ噴火(世界最大級)
です。
そのマグマが冷えてできた巨大な花崗岩(長さ60km、厚さ10km以上)は比重が軽いため、紀伊半島を押し上げて険しい山地を作った、とされているわけですが・・・
厳原町内山にも巨大な花崗岩が露出しており(美津島町の鶏知ダムの地下750mにも花崗岩が伏在しているらしく、かなり広い範囲になります)、対馬南部を持ち上げたのかもしれません。
現在は火山活動や地震がほぼなく、静かに見える対馬の化石・地質・地層が語っていたのは、
激動の「日本列島誕生史」
だったのです。
おまけ2
対馬の深海性貝類について
峰町歴史民俗資料館の前庭に展示されている深海性の貝類化石が含まれる石灰岩。
美津島町吹崎のウニの化石(の一部・・・)。
吹崎は、シーカヤックの拠点である箕形(みかた)に近いので、地質・地層・化石を観察するあらたなシーカヤックツアー・エコツアーが成立するんじゃないか?!
うふふ(-_-;)