対馬のおもしろ狛犬

狛犬の類型・デザインその3

 その1、その2に続き、今回は新たに石工の名前が判明した狛犬と、新発見の狛犬を紹介します。

銀山上神社

【所在地】 長崎県対馬市厳原町久根田舎507 >> Googleマップ

 源平の合戦の最終局面・壇ノ浦の合戦で、赤間ヶ関(下関)に沈んだとされる幼帝・安徳天皇が実は生き延びており、晩年をこの地で暮らされた、という伝承があり、山中に宮内庁の安徳天皇御陵墓参考地があります。

 神社の祭神は、対馬独自の鉱山の神・諸黒神(もろくろがみ)と、安徳天皇です。

 狛犬は、肌理の細かい白い石が使われています。

 昭和4年4月15日、石工は木村貫○郎。 ※〇は、「次」に見えますが判読できず。

 島内の他の神社では見たことがないオリジナルの造形なので、島外の石工の可能性もあります。

 島外で似たデザインの狛犬を見かけた形は、ご連絡ください!

乙宮神社

【所在地】 長崎県対馬市厳原町上槻859 >> Googleマップ

 久根田舎の北西、上槻港の半島(おそらく、元は小島)に鎮座し、祭神は豊玉姫の妹・玉依姫です。

 デザイン(特に眼)を見た瞬間に、あ、岩永系!と思ったのですが、やはりそうでした(笑)

 よく見られる花崗岩や砂岩ではない、滑らかな赤褐色の石材が使われていました。

 大正14年9月28日、石工は岩永 十郎。

嶽神神社

【所在地】 長崎県対馬市豊玉町仁位 >> Googleマップ

 豊玉町仁位の集落内にあるのですが、防鹿ネットに囲まれた人家・墓地の先にあり、なかなかたどり着けませんでした・・・。

 田崎亀次の狛犬が新たに見つかりました!

 前期と比べると、前脚と胴体の接合部がより自然になっていますが、繊細なデザインと砂岩の脆さのため、一部欠損しています。

 阿形(あぎょう。口を開けている。向かって右)の鼻が取れてました。(入れ歯みたい)

 吽形(うんぎょう。口を閉じている。向かって左)の右耳も。

 昭和6年1月吉日、石工 田崎 亀次。

鉾神社/鉾大明神

【所在地】 長崎県対馬市峰町吉田 >> Googleマップ

 狛犬調査とは別の趣味、対馬300山歩きで「神ノ山(かみのやま)」(峰町吉田)に登りました。

 500年ほど前に現地(山中の池?)で弥生時代後期の広峰銅矛が見つかり、御神体として祭り、鉾大明神/鉾神社と呼ばれた、とのこと。

 山頂に祠とかあるかな?と思って登ったところ・・・

 明治28年の狛犬が一対残されており、度肝を抜かれました。

 鉾神社は現在、吉田集落の天諸羽根神社(七社宮)に合祀されていますが、神ノ山は急傾斜でもあり、重い狛犬は運べなかったようです。

 眼と歯がかわいい。

 明治27年4月吉日、石工は不明。

 廃社の瓦が散乱し、大日本麦酒(1906-1949年)のビール瓶や鬼瓦などがあり、数十年前までは参拝されていたようです。

 かつての神山は植林に覆われ、山中に狛犬一対、鳥居2基(明治34年、昭和4年)、「敬神」の石碑(帰路に発見)が残されていました。

 今回紹介した狛犬は、いずれも明治~昭和初期のもので、石工の個性・創造性が強く感じられましたが、田崎亀次以外の石工については、まだわからないことだらけです。

 今後も、対馬の狛犬と石工について、調べてみたいと思います。