対馬要塞地帯標

対馬砲台群を歩く「多功崎砲台・樫岳砲台・郷山砲台編」

2021/07/13対馬砲台群

 こんにちは、観光担当Nです。

 3月11日の東日本大震災は、大自然の猛威の前には人間の「想定」がいかにあやふやで脆いものなのかを、世界に知らしめる出来事でした。

 遠く離れた対馬でも、10年間継続していた釜山~対馬航路が半年の運休になり、日本人観光客の皆様のキャンセルが続き、観光・物産ともに厳しい状況です。個人ではいかんともしがたい現状ですが、少しでも震災前の状態に近づけるよう、努力したいと思います。

 東日本大震災で被災されました方々と、大きなダメージを受けている東北・関東の観光・物産事業者の皆様に、謹んでお見舞い申し上げますとともに、被災地の復興・復旧を心より祈念申し上げます。

 さて、2月後半から私の担当部分のブログの更新が止まっていましたので、2月後半から3月までの動きをご報告します。

 2011年2月21日(月)、対馬市美津島町尾崎(みつしままち・おさき)地区の砲台跡を調査しました。尾崎は、対馬の中央に広がる浅茅湾(あそうわん)の南西部に位置し、重要な防衛拠点であったため、明治37~39年に3つ(樫岳砲台・多功崎砲台・郷山砲台)、昭和9~11年に1つ(郷崎砲台)の砲台が築かれました。

 郷崎砲台は自衛隊の訓練用地として立入禁止になっているので、今回は明治期の3つの砲台を紹介します。

 (対馬要塞ネタを書くたびに、いったい何%の人が興味を持ってくれるんだろう・・・とちょっと不安になりますが(-_-;))

 起点の美津島町尾崎は、対馬産高級養殖マグロ「トロの華」で有名な地域で、人気テレビ番組「田舎で暮らそう」の最終回で神田うのさんが訪れた場所でもあります。

DSC08698_small.jpg

 尾崎地区に入るといきなり正面は海。左折して、さらに左手の山道に入ります。四輪駆動車なら奥まで進めますが、今回は集落内から徒歩で砲台を目指しました。

DSC08706_small.jpg

 軍道に沿って石造りの側溝が続く道を進みます。途中、取水施設や砂防ダムなどの現代施設もありますが、軍の境界石標(通称、陸防)や石積みが100年前の日露時代を感じさせます。

DSC08918_small.jpg

 ここが3つの砲台への道の分岐点で、右は樫岳砲台、前方は多功崎砲台、左は郷山砲台です。今回は尾崎集落から3つの砲台+観測所まで歩いて、全長12キロでしたが、さすがに距離が長いので、1つを選ぶとすれば、規模の大きさ、状態のよさ、景観などの点で、郷山砲台(左)がおすすめです。

DSC08734_small.jpg

 分岐点の「成兵精鋭三塁成」の碑。その大きさにびっくり。

DSC08762_small.jpg

 まずは正面の多功崎砲台。石積みの状態が非常によいのが印象的。海風が強いせいか、落葉樹が多く、木漏れ日が差し込む明るい雰囲気でした。

DSC08818_small.jpg

 樫岳砲台には、28センチ榴弾砲(りゅうだんほう。知らなくても全然恥ずかしくない単語です・・・)の砲座跡が綺麗に残っています。

DSC08847_small.jpg

 郷山砲台への道。いくつか分岐道があり、注意が必要です。右は郷崎砲台(立入禁止)、左は郷山砲台。

DSC08850_small.jpg

 直進すると無線所(?)、左後方に登ると郷山砲台。

DSC08872_small.jpg

 広く明るい砲台ですが、不法投棄の自動車が・・・(-_-;)

DSC08876_small.jpg

 一部建物が崩壊していますが、かえって構造の重厚さを感じさせます。

DSC08883_small.jpg

 朝鮮半島側に海が開けていました。100年前、国家の命運をかけ、近代の防人がここにいました。

DSC08913_small.jpg

 歩き続けてウォーキング・ハイになっていたので、荒れた道の先にある飛岳観測所まで行ってみました。

 対馬の砲台跡は、

  • 今年11~12月に放送されるNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」(原作・司馬遼太郎)の時代(日露戦争前夜、対馬が国防の最前線だった時代)に築かれたものが多い。
  • 砲台の立地条件から、見晴らしがよく、軍道が整備されており、歩きやすいものが多く、トレッキング・ウォーキングに適してる(例外もたくさんありますが・・・)
  • 無機質・機能的なコンクリート製の昭和の砲台に比べて、明治時代の砲台は、石・レンガなどを使用し、建築物のデザインとしても面白い。
  • ほとんどの砲台が実戦では使われておらず、兵隊の幽霊とかも出ない(殴)

 などの特徴があり、砲台の数は、明治~昭和で合計31にもなります。

 (うち、「大山(おやま)砲台」など、現物は実在しているのに、軍の記録(予算)上は存在しない「幻の砲台」もあります)