「ツシマヤマネコ野生順化ステーションと草木染体験」について
こんにちは、局長Nです!
10月12日に「ツシマヤマネコ野生順化ステーションと草木染(くさきぞめ)体験」というイベントを開催しましたので、その報告です。
今回の舞台は、森のミニ博物館(対馬市厳原町内山、旧内山分校)(Googleマップ)と、日本初の哺乳類の野生復帰施設「ツシマヤマネコ野生順化ステーション」(厳原町豆酘(つつ)。内山だと思われがちですが地図上は豆酘)です。
講師は、島おこし協働隊の天然担当、もとい、「生物多様性保全」担当の伊藤麻子さん。
今回の参加者は17名でした。
草木染の染料は、文字通り木や草の葉などです。
樹木の種類により色合いが異なり、絞り方によって模様の変化を楽しめます。
通常、染料の加熱は屋外の大型の鍋で行いますが、今回は風もあり、カセットコンロで。
絞り方いろいろ。ゴムで絞った部分は着色せず白いままになります。
どんな模様になるのかは、ゴムを取るまでのお楽しみ。
葉を使うと赤・黄・茶などの色が出ますが、鉄サビ(古釘)と反応させると黒も。
一見すると、お料理教室のようですね(^^)
しばらく外で乾燥させます。今回は対馬市CATVの取材も受けました。
左足薬指を骨折する前のスタッフAの作品(右)と、私の作品(左)です。
思ったよりもしっかり色がつき、逆に絞った部分は真っ白で驚きました。
さて、この後、バスに乗って野生順化ステーションへ。
実はこの施設、まだ一般公開はされておらず、今回は特別に潜入させていただきました。
>>ツシマヤマネコ野生順化ステーション(Googleマップ)
施設は、国指定天然記念物の龍良山(たてらやま)原始林のふもとにあります。(Googleマップ)
龍良山は、縄文時代には西日本一帯に広がっていたものの、その後、人の手による開墾・開発などで姿を消したシイ・カシ・ヤブツバキなどの照葉樹の原始林で、いわば「縄文の森の生き残り」です。
古くから山岳信仰の対象であり、不入の禁断の地「オソロシドコロ」として強烈なタブーが課せられていたため、極めて純度の高い自然が残されています。
いわば、対馬の自然の「コア」です。
施設内の講習室で、環境省のイケメン・レンジャー吉田さんに、ツシマヤマネコについての講義を開催していただきました。
アクティブ・レンジャーの山口さんとともに、今回もたいへんお世話になりました。
ありがとうございます!<(_ _)>
いよいよ、禁断の領域(おおげさ?)へ・・・。
外からイエネコなどは侵入できず、内からヤマネコも逃亡できないけど、餌となる小動物は出入り可能という特注のフェンスです。
けっこう広い!
そもそもこの施設がどう使われるのかといいますと・・・。
- ツシマヤマネコは、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種1A類に指定されており、このままでは近い将来にかなりの確率で絶滅します。
- 自然状態での増加は難しいので、福岡・東京・神奈川など全国9ヶ所(だったかな)の動物園で人工繁殖に取り組んでいます。
- 人工増殖させたヤマネコを自然に帰すには、復帰先の自然環境を整備・改善することが必要です。
- 動物園育ちのヤマネコを野生に帰すためには、野生の小動物を捕食するトレーニングなども必要です。
3.を実現するため、内山地区ではかつて人とヤマネコが共生していた環境(里山)を取り戻すための取り組みが行われており、4.を実施するために順化ステーションが建設されたのです。
佐渡のトキや兵庫のコウノトリの野生復帰事業は有名ですが、哺乳類では対馬が日本初。
野生のツシマヤマネコの生態についてはまだわからないことが多く、試行錯誤しながらの取り組みになりそうです。
こうして珍しく雨も降らず、イベントは無事終了したのでした。
参加していただいた皆様、ありがとうございました<(_ _)>
イベントを終えて。
ツシマヤマネコは御岳、龍良山などの原始林にも生息していますが、実は餌となる小動物(ネズミ、モグラ、野鳥など)が豊富な里山周辺を主な生息地としています。
しかし、急激に進む過疎高齢化・人口減少などにより、手入れされない森林や耕作放棄地が増え、ツシマヤマネコの生息環境は急激に悪化していると考えられています。
2050年、この島にはどれだけの人・集落が残り、ツシマヤマネコは生き延びているのだろうか、と考えさせられた1日でした。
対馬に遊びに来てください。
そして、ツシマヤマネコなどの対馬の生き物たちが置かれている現状を知っていただければ、と思います。