
対馬楽講座 第4回「対馬の植物」レポート
こんにちは、朝夕はすっかり涼しくなり、寝落ちして寒さで目が覚め、布団に入ったら出られないエヌです。
10月1日に始まった「対馬楽講座」も、おかげさまで第4回目を迎えました!
受講者のみなさま、講師のみなさま、ありがとうございます。

※写真は(講座と関係ないけど)ニホンミツバチの蜂洞(はちどう)です。ツマアカスズメバチが写っているのが、わかります?
対馬楽講座 第4回「対馬の植物」

講師は、植物研究者 掛澤明弘(かけざわ あきひろ)さん。
静岡県浜松市出身の掛澤さんは、京都の大学・大学院時代に屋久島の植物の小型化現象について研究。島おこし協働隊として来島し、3年半にわたり、生物多様性保全担当として植物相の保全や普及啓発活動に尽力しました。
現在は、(一社)対馬観光物産協会の上対馬事務所に勤務しながら、対馬の植物調査・研究を続けています。

今回のテーマは「対馬の植物」。
受講者は32名でした。ありがとうございます!
「対馬の植物」概要
- 講師 掛澤 明弘 さん
- 日時 2025年10月29日(水) 19:30~21:00
- 会場 対馬市交流センター3階大会議室
対馬で見られる植物の紹介
種子植物
- 木本類 約300種
- 草本類 約800種
- シダ類 約130種
計 1,200~1,300種
対馬の面積は、日本の国土のわずか0.2%ですが、日本の維管束植物の約1/7が見られることになります。
対馬に「日本系植物」が多い理由
- 対馬の植物の分布は、大陸系と日本系の植物が混ざり合っているのが特徴だが、圧倒的に日本系が多い。
- 原因は、約7~1万年前の最終氷期。気温低下(平均3~8℃寒冷)による海水準低下で対馬は日本列島と繋がったが、朝鮮半島・大陸とは細い海流で隔てられていたと考えられる。
大陸系(大陸を分布の中心とする植物)
日本では対馬でしか見られない「大陸系植物」の例
- ツシマヒョウタンボク、ナンザンスミレ、オオチョウジガマズミ、タンナチョウセンヤマツツジ、チョウセンキハギ、ハクウンキスゲ、オオチダケサシなど。

さらに日本本土側まで分布を広げるもの
- ゲンカイツツジ、チョウセンニワフジ、アツバタツナミソウ、ヒトツバタゴ、ハナナズナ、ヒゴタイ、ダンギク、ダルマギクなど。
日本系(日本本土を分布の中心とする植物)
日本固有種で対馬まで分布するもの
- コバノミツバツツジ、クサボケ、モミなど。
朝鮮半島南部の島嶼部まで分布するもの
- ヒメコマツ、ギボウシラン、ヒメウワバミソウなど。
対馬固有の植物
- ヒメマンネングサ、ツシマアカショウマ、ツシマギボウシ、ツシマノダケ(韓国南部にも?)、シマトウヒレンなど。

対馬の植物まとめ
対馬の異なる分布様式をもった植物が混交
- 大陸系←→日本系
- 北方系←→南方系
- 対馬固有
まだ記録されていない植物種もあるかも?
対馬の自然環境が抱える問題
- シカ・イノシシの急増による食害
- 園芸目的での過剰採取
植物(特に低木・草本)の多様性低下 → 植物の多様性:生態系の基盤 → 対馬の生き物全体に影響
ハナナズナ
- 中国東北部~朝鮮半島に分布
- 日本では対馬、岡山県、広島県。岡山・広島では絶滅し、対馬でもほぼすべての生育地が消滅。
- タイワンモンシロチョウが夏場の貴重な食草として利用しており、ハナナズナの激減がタイワンモンシロチョウ減少の一因?
ハクウンキスゲ
- シカ・イノシシの影響が少ない断崖などに残存
- 観賞価値の高い植物であり、景観の悪化や観光資源の減少などの問題
生活や経済への影響
- 下層植生の喪失=土壌保持力の低下
→土壌流出、土砂崩れの高頻度化
シカ不嗜好(=嫌いな)植物
- ヤマアイ・ヒトリシズカが林床を埋め尽くす
=主多様性の喪失
対馬で増える「暗い森」
- 管理不足の人工林
- 利用されなくなった二次林
- 明るい所で育つ植物は生育できない
→暗い所でも育つ種類に置き換わり、多様性は失われてしまう

対馬楽講座について
さて、対馬楽講座では、「対馬の楽しみ方を身につけよう!」をキャッチコピーに、例年、地域の自然や歴史、魅力を掘り起こす講座&フィールドワークを実施しています。
今シーズンは「狛犬」「野鳥」「昆虫」「植物」「砲台」など各回ごとにテーマが独立しているため、興味のある分野のみの受講や、途中参加も受け付けています。お申込みいただいた方は、過去の講座動画も限定リンクで視聴できます。
>> お申込みフォーム


https://kacchell-tsushima.net/archives/10691





