対馬の狛犬の類型・デザインについて、その4(美津島町尾崎編)

対馬の狛犬,対馬神社群

 こんにちは、隙間時間で狛犬調査を続けているエヌです。

 調査を進めるたびに謎が増えるのですが、時にはパズルのピースがぴたりとハマるように謎が解けることもあり、狛犬をめぐる旅がどこにたどり着くのか、楽しみです。
(周囲は呆れてますけどね!)

 さて、今回の隙間時間は、2/8(土)午前中の今里小学校(美津島町今里)での「神さまの田びらき」の上映会と、イラストレーター・ヤマガスキナダケさんのアテンド(夕方の飛行機から3日間)の間ということで、今里の隣、尾崎地区の神社&狛犬を探して歩いてみました。

 ちなみに「神さまの田びらき」は、今里地区に伝わる海の民話を、日本財団がアニメーション化したもので、YouTubeで公開されています。

 ヤマガスキナダケさんは、「山と道」やYAMAPなどで著名なイラストレーターで、今回2度目のご来島です。

 前回の記事はこんな感じ!(今回の様子は別記事で~)

離島あそびのススメ」(YAMAP MAGAZINE 2021.09.08)

 さて、尾崎地区の狛犬&神社めぐりに出発です。

天神神社

 国土地理院地図に鳥居マークがありましたが、場所がわかりにくく、近所の方に尋ねてなんとかたどり着きました。

 神社庁に登録されておらず、祭神などの情報がなく(美津島町誌を持っておらず・・・)、狛犬もなし。

八幡神社

 地図には記載されていませんが、尾崎砲台群(郷山/樫岳/多功崎/郷崎の各砲台、飛岳司令所)に行くときに鳥居を見かけ、気になっていました。行ってみると・・・

 狛犬発見!

 石工の名前は刻まれていませんでしたが、この愛らしい「ずんぐりむっくり」さ・・・

 ユーモラスな表情は、太祝詞神社(美津島町加志)と同型・・・おそらく有江型ですな!
(尾崎村の石工 有江さん)

 昭和16年8月吉日。飛び出した眼が特徴です。

金比羅神社

 尾崎集落を見下ろす小山の上にあります。

 海の神・金比羅さんを祭るということで、鳥居ほどの高さの碇が奉納されていました。

 農地の少ない対馬では稲荷神社(お稲荷さん)を見かけることがほぼなく、代わりに恵比須神社・金比羅神社は必ず見かけます。

都々智神社(遥拝所)

 尾崎半島の北端・郷崎(道が険しく徒歩か船でしか行けない)にある都々智神社を遥拝するための神社です。

 以前、写真を撮ったことがあり、たしか狛犬は無かったなあ、と思いながら訪問してみると・・・

 狛犬が、ある!!

 28糎(センチ/サンチ)榴弾砲の砲弾もある!!(いや、以前からあったけど)

 こ、これは・・・田崎亀次初期型あるいは増田型・・・。
(どこから持ってきたんだろう?妙に綺麗)

 大正10年4月吉日。(あれ? 郷崎にあった狛犬では??)

 新しく設置されていた由緒書きによると、令和2年に遥拝所を新築し、その際、郷崎の都々智神社(郷崎大明神)と、さきほど見てきた天神神社・八幡神社をこちらに遷座・合祀した、ということのようです。

 2009年の写真を見てみると、郷崎の神社の鳥居には、「大正4年11月吉日 石工 田嵜亀次」(崎ではなく、嵜ですね)の文字が彫られており、鳥居の6年後に狛犬が奉納されたことになります。

 少し前に訪問した際、鳥居も狛犬も撤去されており、台風で崩れたのか?と不思議に思っていたのですが、遷座に合わせて尾崎地区の皆さんが運んだようです。

 ちなみに狛犬のデザインは亀次なのですが、同門?の増田さんの作品の可能性もあり、特定には至らず・・・。

 社殿は新しく大きくなり、防犯(施錠)もしっかりして、喜ばしい反面、10世紀前半の「延喜式」にも記載された、約1200年前からの歴史をもつ郷崎の古社が、他の2つの神社とともに失われてしまうのは、なんとも切ない気持ちでした。

 高齢化が進むなか、小さな集落で多数の神社の神事を継承し、拝殿などの建物を維持していくのは難しいのですが、小さな本殿だけでも、あるいは何とか記録だけでも残せないか、と感じた1日でした。