神秘と絶景の霊峰・白嶽と登山道について

トレッキング

 こんにちは、年々暑さが厳しさを増し、いきなり豪雨が降るなど、夏のイベント企画・実施が難しくなったなあ、と感じているエヌです。

 8月には山の日という、山の恵みに感謝する祝日もあるのですが、万全の熱中症対策が必要ですね。

 さて、秋以降、対馬の霊峰・白嶽のトレッキングを計画している方もいらっしゃるかと思いますが、大雨・台風後は登山道が荒れます。

 登山道を誰がどう維持・管理していくのか、という課題もあり、(お盆前に大雨が降ったので)情報共有の意味も兼ねて、白嶽の魅力と登山道の現状をお知らせします。

白嶽(しらたけ)

 対馬を代表する霊峰で、日本百低山(山と溪谷社、幻冬舎)、九州百名山(山と溪谷社)などに選定されています。
 写真は8月17日(日)、登山口がある洲藻(すも。長崎県対馬市美津島町)の登山者用トイレ・駐車場からの白嶽遠望です。

 拡大。左が雄岳(おだけ)、右が雌岳(めだけ)。
 登山口駐車場はここから2.5㎞程先にあります。

 8/12前後の豪雨の影響で大木が林道を塞ぎ、渓流が溢れていました。対馬市の観光交流商工課の職員さんが、チェーンソーで倒木を処理してくれました。ありがとうございます!

登山口~ダメージを受けた登山道

 登山口にもかなりの土砂が・・・。

 歩けないほどではありませんが、流木が堆積し、登山道の土砂が一部流出していました。

 渓流沿いは、登山道が大きく削り取られています。
 水量が多い場所なので、百キログラム単位の石で登山道を補強する必要がありそうですが、重機は入らず、チェーンブロックとか荷締め機などの特殊な機材が必要そう。
 どうしたものか・・・。

 登山口から山頂までの距離2,205mの間で、300mごとに現在の標高と残りの距離を教えてくれる、通称300m看板です。
 ちなみに300m地点の標高は80m、山頂までの距離は残り1905m。

 いつもの要メンテ箇所その1。U字溝の橋?に枝が詰まり、水が溢れています。

 枝を取り除くと水位が下がり、渡れるようになるのですが、今回は土砂の量が多い・・・。

 要メンテ箇所その2。木製の橋の上に上流から土石が流れこんでいます。

 手作業で土石を取り除くと、雨水が流れ落ちる隙間が現れました。
(「かき板」があると効率的に作業ができそう)
 木材の腐朽予防のためにも、この状態の方がよさそうです。

 600m地点の標高は100m、山頂まで1605m。

 木立のなかに突如姿を現す巨石。岩上も小さな森のようになっており、通称「オームの岩」。
 元ネタは王蟲(オーム。風の谷のナウシカ)ですね。

 2022年に大雪山・山守隊の岡崎さんに指導いただいた登山道(近自然工法)は健在。
 石や木材を配し、水をジグザグに流して勢いを削ぐことで、土砂の洗堀を防いでいます。

 整備してない登山道には、山側から水が流れこみ、落ち枝が堆積していました。
 土砂や枝を除去すると、水流が底をえぐってしまいます。
 いずれにしても登山道としては使えないので、整備が必要ですね。

 登山道の土砂が流失し、岩石がむきだしになっています。
 歩くことはできますが、足首を挫きそう・・・。

 ジグザグに形成された登山道を、上から下へ垂直にショートカットするように水流が削ってしまうケースも。
 補修が必要ですが、できるだけ上部で水の流れを登山道の範囲外にそらさないと、また削られてしまいます。

行者(ぎょうじゃ)の岩屋

 1200m地点(標高220m、山頂まで1005m)の行者の岩屋。ここから上は渓流などもなく、登山道の傷みはほぼなくなります。

 このつっかえ棒を外すと大岩が転がり落ちると伝えられており、熱心な信者が棒を追加していきます(うそ)。

 1500m地点(標高290m、山頂まで705m)。まもなく白嶽の山中鳥居です。

山中の鳥居、神域への入り口

 白嶽の鳥居。ここから上はスダジイやアカガシなどの照葉樹林の本来の植生が残っています。
 一礼して山頂を目指します。

 心身を清める祓戸(はらえど/きど)神社。
 神社の原型、神宿る磐座(いわくら)です。

 1800m地点(のはず。標高360mくらい)。倒木でひしゃげてました・・・。

 残り400mですが、高低差160mを登ります。100mに対して40mという、すごい傾斜・・・。

 対馬では標高300mを超えるくらいから、アカガシが現れます。文字通り樹皮が赤っぽく、葉っぱの先が尖っているのが特徴です。

 白嶽を熱心に信仰しているのは、両麓の洲藻(すも)、加志(かし)などのほか、島内の漁師さんなど。
 海の仕事は不安定で危険なので、大漁祈願・安全祈願の願掛け(祈願)をするのです。
 写真の水天宮は、南部の豆酘(つつ)地区の漁師さんが、海上の事故で九死に一生を得て、その感謝をこめて奉納したもの。

 山頂手前の広場。
 石を積んで願掛けをしますが、願いが成就したら願ほどきに来るのがしきたりです。
 ロックバランシングをやってるのは誰だ・・・。

 あ、この広場が2100m地点(標高480m、山頂まであと105m!)。
 雄岳山頂(斜面を登る)と、休憩所の「岩のテラス」(石灯籠の先へ平行に進む)の分岐点です。

 今回は先に岩のテラスへ。

 山頂は狭く、強風が吹くことがありますが、岩のテラスは広くて日当たりがよく、雌岳の岩盤により風も遮られるので、絶好のお弁当スポット。

 右上の白い直線は対馬空港の滑走路。
 平地がなく、島の面積の89%を山地が占めています。

 テラスから見た雄岳山頂(左のとんがり)。

 広場に戻り、ロープを伝って登ると、雄岳(山頂)と雌岳の鞍部(あんぶ)です。ここを越え、左に見える雄岳に登ります。

 鞍部の祠(ほこら)です。左の祠の上には、漁師さんが奉納した碇(いかり)が乗っています。

 これ、登れるのか?と圧倒される雄岳のピーク。
 左に進み、裏側を時計回りに巻くように登ります。

 もはやロッククライミング。

白嶽(しらたけ)山頂を歩く

 白嶽山頂部を歩く動画です。高所恐怖症の人には、視聴をお勧めしません・・・。

 石英斑岩の岩脈が、竜の背骨のように貫いています。

 白く輝く、神々しい山頂部。
 古代の島人が神聖視したことがよく理解できます。

 雄岳から見た雌岳。(広角)
 気象条件がよければ、壱岐や沖ノ島、朝鮮半島が見えることも。

 雌岳。岩窟があり、その下に緑青色の鳥居があるのがわかりますか?
 雄岳もそうですが、岩塊そのものがご神体なのです。

 実際の迫力の10分の1も伝わらないと思いますが、パノラマ撮影(笑)

 山頂から見た、岩のテラス。

 名残を惜しみつつ下山。

 ちょっとわかりにくいのですが、碇のある祠のあたりから少し下がると、雌岳の鳥居(奥の宮)です。

 あ、山頂手前の広場には、狛犬もあります(笑)

 無事下山。

 登山口手前の道路です。
 側溝が埋まってないのに岩石があるということは、山の斜面から側溝を飛び越えて落ちてきたのか、別の場所から流れてきたのか・・・。
 8月後半はゲリラ的な集中豪雨もあり、登山道の荒れ方が気になります。

 洲藻集落内の白嶽神社です。
 祭神は大山祇(オオヤマツミ。山の神)と、多久頭魂(タクズダマ。対馬ではタカミムスビとカミムスビの子神とされ、天道法師とも同一視されています)。
 白嶽そのものは神聖で立ち寄りがたく(禁足地)、また険しくて子供や高齢者は参拝しにくいという現実的な問題もあり、通常はこちらから白嶽を拝みます。遥拝(ようはい)という古い信仰の形式です。

 白嶽は素晴らしい山ですが、登山口までの林道、また登山口から行者の岩屋までの登山道の荒廃(土砂・土石の流出など)が気になります。
 文化財などもそうですが、整備(保全)と活用の両立を図る仕組みを考えていかなければ、と感じています。