対馬楽講座 第3回「対馬の昆虫」レポート

対馬の自然,対馬楽講座

 こんにちは、10/18(土)に松山港(人生初!愛媛県)から客船「にっぽん丸」に乗りこみ、厳原港(対馬)に向かう予定のエヌです。

 引退して優雅な船旅・・・ではなく、船内で観光プレゼンとツアーデスク(お客様の観光相談)という業務を行うのですが、コロナ禍もあり、ずいぶん久々です。

 松山は、「坂の上の雲」や河野通有(元寇で活躍した伊予の武将)など対馬と関わりのあるテーマもあり、またご紹介します。

対馬楽講座について

 さて、対馬楽講座では、「対馬の楽しみ方を身につけよう!」をキャッチコピーに、例年、地域の自然や歴史、魅力を掘り起こす講座&フィールドワークを実施しています。

 今シーズンは「狛犬」「野鳥」「昆虫」「植物」「砲台」など各回ごとにテーマが独立しているため、興味のある分野のみの受講や、途中参加も受け付けています。お申込みいただいた方は、過去の講座動画も限定リンクで視聴できます。

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対馬楽講座 第3回「対馬の昆虫」

 第3回のテーマは「対馬の昆虫」。

 講師は、対馬博物館 自然史担当学芸員 谷尾 崇(たにお たかし)さん。

「対馬には日本列島系、北方系、南方系、対馬固有種、大陸日本共通種など多くの生き物が生息しており、それらが「対馬固有の生物相」を構成しているところが大きな魅力」と語ります。

 それらの生態系を生み出した氷期・間氷期のお話、標本の重要性、昆虫採集のすすめ、同定(生き物の種類を判別すること)などについて、受講者の皆さんも聞き入っていました。

 受講者は35名です。ありがとうございます!

対馬楽講座 第3回「対馬の昆虫」概要

  • 講師 対馬博物館 谷尾 崇 さん
  • 日時 2025年10月15日(水) 19:30~21:00
  • 会場 対馬市交流センター3階大会議室

対馬の概要

  • 日本の中の対馬
     日本の最北西端であり、朝鮮半島に最も近い国境の島
  • 地球の中の対馬
     旧北区という生物地理区に属し、トカラギャップほどではないにせよ、生物の分布境界線の一つと考えられる。海峡の深さは分布障壁としての重要度を意味し、氷期の海退と深く関わっている。
  • 植生から見る対馬
     常緑広葉樹林帯に属し、西南日本と共通する植物が多い。
  • 対馬の昆虫相を構成する要素
     有名な大陸系のみならず、日本列島系、北方系、南方系、対馬固有種、そして大陸・日本共通種がみられる。

対馬の昆虫の特色

 対馬の“固有種”は琉球や小笠原のような島と比較して多いわけではないが、日本ではここでしか見られない大陸系の種が多くみられる。大陸系の生物と日本列島系の生物がそれぞれ入り混じった「対馬固有の生物相」が魅力。

  • 北方系昆虫
     北方系の種は、大陸と日本の北海道や東北、本州の高標高地などに生息し対馬にも生息しているが、九州本土以南には生息していない。
  • 南方系昆虫
     温暖な南方に分布中心がある種で、対馬が北限となっている種。南方から移動分散し飛来する種もいる。
  • 日本列島系昆虫
     日本列島に広くみられるが、朝鮮半島など大陸には分布していない種。
  • 大陸系昆虫
     大陸と対馬に共通して生息し、日本列島の他地域には見られない種。和名に“ツシマ”と付いていても対馬固有種でないことは多々ある。
  • 対馬固有種
     対馬で独自の進化を遂げた固有の生物。固有種、固有亜種それぞれいる。

標本の意義

  • 標本の数の重要性
     同じ種の数多くの標本を見ることで、集団の全体像がわかり、生物の理解に繋がる。
  • 昆虫以外の事例
     鳥類の研究においても標本は無くてはならないものであり、まとまった個体数を解析することで、傾向が見えてくる。

昆虫採集のすすめ

  • 採集と標本化はセット
     採集行為は飼育か標本化を目的に行われることがほとんどであり、採集して殺生をするからにはきちんと標本に残す責務がある。
  • 採集方法の紹介
     捕虫網を用いた採集はもちろん、対象の分類群に適したトラップや採集法を用いることで、効率的に昆虫を採集できる。トラップを用いた採集は、誰でも画一的に調査を行えるというメリットもある。
  • 標本の作り方
     昆虫標本は乾燥標本である。採集した昆虫をピン刺しにして整形、そのまま乾燥させれば標本は作れる。学術標本としてはきちんとラベルを付与することが最も重要である。
  • 同定のすすめ
     標本にすることで、形態を精査して同定することができる。同定をすると種を覚えることに繋がる。同定にも知識とノウハウが必要で、図鑑があれば誰でもできる訳ではない。