対馬博物館 特別展「アンゴルモア 元寇合戦記の世界」について

2024/10/31アンゴルモア元寇合戦記,対馬の歴史

 こんにちは、たまの出張の移動時間(対馬~福岡は高速船だと片道2時間15分)に読書を楽しんでいるエヌです。

 最近読んだのは、歴史小説「パシヨン」(川越宗一さん)、ドキュメンタリー「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」(藤井一至さん)など。

 (読書の話は置いといて・・・)

 さて、今年は元寇750年ということで、福岡など各地で講演会・シンポジウムなどが開催されています。

 松浦市・壱岐市・福岡市・対馬市で4市合同元寇スタンプラリーが実施され、対馬でも小茂田浜神社大祭(元寇慰霊祭)が2日間にわたって開催される予定です。

 で!

 お祭りに合わせて来島されるなら、対馬博物館の特別展

 は必見です!

特別展「アンゴルモア 元寇合戦記の世界」

元寇750年記念・市制施行20周年記念特別展
アンゴルモア 元寇合戦記の世界―照らし出された対馬の元寇―
2024年10月12日(土) 〜 2024年11月24日(日)


 一般的な元寇の印象は、「鎌倉時代に蒙古の大軍が2回にわたって日本侵攻を企てるも、鎌倉武士の抵抗や台風によって撤退した」 というものだと思います。

 国宝・蒙古襲来絵詞(竹崎季長が自らの手柄を訴えるために作成した絵巻)は有名ですが、最初に侵略を受けた対馬の出来事については記録が少ないこともあり、あまり知られていませんでした。

 「アンゴルモア 元寇合戦記」は、作者のたかぎ七彦先生が、「対馬の元寇」に焦点をあて、史実と創作を織り交ぜながら、漫画(のちにアニメ化)として描き出した作品です。

 作中に安徳天皇や防人(の末裔)が登場したり、金田城が決戦の場となるなど、対馬の伝承が巧みに取り込まれており、対馬島民としては胸が熱くなります(笑)

 今回の特別展では、たかぎ先生の貴重な資料や原画が一挙公開されています。

 対馬博物館の外観と吹き流し(少弐氏の家紋)

 フォトスポットでは、主人公・朽井迅三郎(くちいじんざぶろう)の両面パネルと蒙古軍が!

 特別展入口でも迅三郎がお出迎え!

 人物相関図です。
 蒙古軍はモンゴル・高麗などの混成軍。
 迎え撃つ対馬側は、地頭の宗助国一族、刀伊祓(といばらい)と称す防人の末裔、鎌倉の政争に巻き込まれ追放された朽井迅三郎ほか流人たち、対馬に援軍を送る約束を果たせなかった少弐景資(しょうにかげすけ)などなど。

 最近はフルデジタル(原画無し)の作家さんも多いようですが、たかぎ先生は細密な原画を描き、スキャンし、修正や彩色などを行うとのことで、今回はたくさんの原画を対馬市に寄贈いただきました。

 対馬の霊峰・白嶽。
 「山と溪谷」2024年11月号で、「日本百低山」に認定されました。しつこい(笑)

 決戦の地・金田城。

 アニメの台本とセル画(?)も。

 ヒロイン輝日姫(てるひひめ)を演じた声優のLynn(りん)さんのサイン台本と、たかぎ先生が金田城の地形をイメージするために製作された粘土模型です。

 たかぎ先生の作業机を再現したコーナーもあり、机上のスケッチブックが実は・・・

 人物の姿勢・衣装などが描かれ、詳しい説明も!

 風景や建物などの細かい設定と描写が、作品に説得力を与えるんですね。
 このスケッチブックも、自由にご覧いただけます。(すごい!)

 特別展の観覧券購入特典は、対馬北部・比田勝(ひたかつ)での戦いを描いた短編「勝星の太刀」(非売品)です。

 小茂田浜(佐須浦)の宗助国公以外にも、宗一族は対馬各地で蒙古・高麗軍と戦ったという伝承があり、上記の下野次郎(上対馬町比田勝)、宗右衛門三郎(佐須)、宗甲斐六郎(峰町吉田)、宗越前五郎(美津島地加志)、宗右馬次郎(厳原町久根田舎)など各地に伝承・墓所があります。

平常展 元寇関連

 そして実は、平常展でも元寇に関する展示が追加されています。

 作中にも登場した古代の占い・亀卜(きぼく)については・・・

 実際に使われていた亀の甲羅(江戸後期~明治初期)が展示されています。

 対馬の戦いを伝える数少ない資料である「八幡愚童訓」。

 特典の冊子「勝星の太刀」の元になった、比田勝家に伝来する太刀です。

 文永の役の猛将・斎藤資定(さいとうすけさだ)の奮戦を描く斎藤世譜。
 敵をなぎ払う5本の太刀がすべて折れ、矢が尽きたのちも石で敵を打ち、最後は自害した、と伝わります。

 実は、芸人「ナイツ」の土屋さんのルーツが、この斎藤氏だったりします。

「ナイツ〜殿様がくれた名前 元寇に駆けつけ〜」(NHK・ファミリーヒストリー)

 そして、以前は長崎県立対馬歴史民俗資料館でも展示されていた、ひときわ目を引く象牙張りの美しい鞍。

 小西行長の娘・マリアが、のちに初代藩主となる宗 義智に嫁入りする際に持参した、とされ、斎藤家に伝来しています。

 ちなみに、ブログの最初に紹介した歴史小説「パシヨン」(パッション=受難)の主人公は、宗 義智公とマリアの子、小西マンショです。(前振りとつながった!)

 関ヶ原の戦いで小西行長が処刑されたのち、マリアは離縁されてマンショと共に長崎に送られ、マンショはマカオ、ポルトガル、ローマに渡り、司祭となります。

 処刑されることがわかっていながら、日本に戻って布教活動を行い、1644年に捕らえられ、殉教。

 それから200年以上、正式に任命された日本人カトリック司祭は誕生せず、実質的に江戸時代最後の司祭になりました。

>> 小西マンショ(Wikipedia)

※ちなみに作中でキリシタンを激しく弾圧し、小西マンショに「穴吊り」という凄まじい拷問を加えるのは、「沈黙」(遠藤周作さん)にも登場する、幕府宗門改役の井上政重です。

ストレイテナー - 「Braver」MUSIC VIDEO[Full]

 秋の夜長は、長崎出身のストレイテナーの「Braver」(アンゴルモア元寇合戦記のオープニング曲)でも聞きがら、漫画やアニメ、書籍で対馬の歴史を追想されてはいかがでしょうか?

 あ! 対馬博物館は木曜休館です!!