対馬の狛犬の類型・デザインについて

2025/01/01対馬の狛犬,対馬神社群

 こんにちは、最近、狛犬に興味を持っているエヌです。(忙しいな!)

 対馬神社ガイドブック を作成した際に、狛犬の撮影もしていたのですが、狛犬の類型(お座り型、玉乗り型、構え型など)や、デザイン(製作者や工房の個性)の共通性、製作年代、作者にも興味が湧いてきました。

 今後、少しずつ調査をしていきたいのですが、類型やデザインの面白さについて、ちょこっと紹介します(伝わるのか?!)

 ちなみに、狛犬についての概要はこちら(神社本庁)

一番古い狛犬

 現時点で、対馬で一番古い狛犬は、厳原八幡宮の階段上にあり、文化4年(1807年)丁卯正月の日付が刻まれています。

厳原八幡宮(厳原町中村)

 古い狛犬は花崗岩製で、表面が風化しているものが多いのですが、この狛犬は彫りが鮮明です。
 (明治期以降は、繊細な彫刻が可能な砂岩製が増えます)

 まだほとんど調査していないので、もっと古い狛犬が見つかる可能性も大です。

 

狛犬の製作者

 狛犬の台座には、発注者(個人名、〇〇氏子中など)、製作年月日(昭和〇年〇月吉日など)が刻まれていることが多く、まれに製作者名(石工 〇〇など)が記されているものがあります。

田崎 亀次

 田崎亀次は、1888(明治21)年生~1946(昭和21)没、現在の対馬市豊玉町大石に住み、狛犬などを製作した石工・彫刻家です。

 住吉神社(美津島町鶏知)、多久頭魂神社(厳原町浅藻)、豊崎神社(上対馬町比田勝)などの狛犬を手掛けています。

住吉神社(美津島町鶏知)

豊崎神社(上対馬町比田勝)

有江 政雄

太祝詞神社(美津島町加志)

 太祝詞神社(対馬市美津島町加志)の狛犬には、「石工 尾崎村 有江 政雄」の銘が刻まれています。

雷命神社(厳原町阿連)

 表情豊かなユーモラスな作風で、雷命神社(厳原町阿連)、天神神社(美津島町吹崎)、海祇神社(美津島町島山)、屋利止加神社(豊玉町鑓川、花崗岩製)などに共通点が見られます。

岩永〇六 ※〇は不明

厳原八幡宮(厳原町中村)

 厳原八幡宮の一番手前の狛犬には、岩永〇六と石工の名前が刻まれているのですが、〇が、真にも安にも他の文字にも見えます。
 どなたか情報ください・・・。

狛犬の類型(パターン)

 上記の狛犬はいわゆる「お座り型」ですが、「玉乗り型」、「構え型」など様々な類型があります。

玉乗り型

阿麻テ留神社(美津島町小船越。※テは氏の下に一)

 広島に多く、九州にまで広まっている形だとか。阿麻テ留神社(美津島町小船越。テ=氏の下に一)、恵比寿神社(美津島町賀谷)ほか。

構え型

 前身を伏せ、腰を高く上げ、今にも飛びかかりそうな躍動的なデザインです。

嵯峨神社(豊玉町嵯峨)

 嵯峨神社(豊玉町嵯峨)、乙宮神社(豊玉町糸瀬)、鹿見本神社(上県町鹿見)など。

天神神社(豊玉町小綱)

 個人的には、天神神社(豊玉町小綱)が素晴らしいと思います。

お座り(細)型 

 既出の田崎亀次の住吉神社(鶏知)の狛犬が典型的なデザインで、垂れた耳、細身などが特徴。対馬で一番多く見かけます。

吠え型

 阿(あ。口を開けている)も、吽(うん。閉じている)もどちらも歯をむき出しており、激しく吠えている、唸り声をあげているように見えます。

行相神社(豊玉町田)

 典型は、行相神社(豊玉町田)です。

現代型

 昭和~平成時代に愛知県岡崎市で大量生産された「岡崎現代型」。

志々伎神社(厳原町小浦)

 完成されたデザインなのですが、日本中どこにでもあります・・・。

独自路線

銀山上神社(厳原町久根田舎)

 そのほか、銀山上神社(厳原町久根田舎)、和多都美御子神社(豊玉町仁位)など様々なデザインの狛犬があります。

入江神社(豊玉町嵯峨(水崎))

 いちばんかわいい狛犬(独断)は、入江神社(豊玉町嵯峨。字名?は水崎)にあります。

 神社はほぼ全集落にあり、長い年月にわたって地域の祈り(大漁祈願や豊穣、住民の安全、一年の吉凶判断、戦勝祈願など)が捧げられてきました。神社や狛犬を通して、地域の暮らしが見えてくるような気がします。

 今年の初詣は、狛犬にも注目して神社めぐりをしてみませんか?

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