「光るキノコ観察会2024」(2024/6/22)実施報告について

対馬の自然,対馬楽講座

 こんにちは、1ヶ月ほど前から沖縄・奄美・和歌山・高知などの光るキノコのニュースが届き、対馬でも観察会をやらねば、とソワソワしていたエヌです。

 今年は梅雨入りが遅かったこともあり、6/11(火)に光るキノコの発生を初確認、14日(金)から観察会の参加者募集を開始、22日(土)に「光るキノコ観察会」を開催しました。

 夏になって高温・乾燥化が進むと姿を消すので、梅雨が終わるまでしばらく楽しめそうです。

 1ヶ月くらい前から告知できればよいのですが、温度・湿度、晴れ・雨などの出現条件が厳しく、日程を確定できないのが難点ですね・・・。

(ちなみに秋にも再発生するらしいのですが、気温・湿度などの条件がさらにシビアで、昨秋はちょこっとしか確認できませんでした)

光るキノコ2024観察会の様子

 募集開始後、20名ほどの応募があったものの、天気予報はずっと雨。

 当日6/22(土)の午前中、「開催します!18:00くらいの天気を見て、自己判断でキャンセルもOKです!」と連絡すると、

 参加者もスタッフも中止を予想していたらしく、「マジですか!(やるの?!)」との反応。

 結局、小さなお子さま連れご家族などのキャンセルもあり、参加者14名+スタッフ2名で開催しました。

光るキノコ・ミニ講座

 対馬楽フィールドワークでは、観察会が単なる「遠足」にならないよう事前にミニ講座を行います。

 前回はパソコンでプレゼンしましたが、今回は雨予報なので紙資料を準備。

 ・・・が、強風でバサバサ舞い、また雨が降りそうだったので短縮版となりました。

 次回、講座は室内でやります(反省)

【ミニ講座の内容】
・対馬の代表的なホタル3種(ゲンジボタル、ツシマヒメボタル、アキマドボタル)
・生き物はなぜ光る?
・対馬で見られる光るキノコ2種(シイノトモシビタケ、ヤコウタケ)と発生条件
・龍良山(たてらさん)とは
・光るキノコの撮影法
・野外活動の注意点

現地観察会

 20:30に森に入ると、風も弱まり、ほぼ雨の影響もなくなりました。

 林道を少し歩き、参加者のみなさんに「ヘッドライトを消してみてください」と声がけすると、隣人の顔も見えない漆黒の闇が訪れました。

 「あっ!何かチカチカ光ってる!」 (ツシマヒメボタル)

シイノトモシビタケ

「足下に、ぼんやり光が見える!」

 とすぐに声が上がりました。

 昨年はかなり観察・説明しないと発見できず、詐欺師呼ばわりされそうだったのですが、今年は良コンディション。

光るホタル観察の様子

 参加者の皆さんは、目をこらしたり、地面近くに座りこんだりして、それぞれホタル・光るキノコの観賞を楽しみました。

 ツシマヒメボタル(1分間に80回のフラッシュ光を発する)とシイノトモシビタケは、かなりの数が確認できたほか、ヤコウタケ(ゼラチン質でおおわれている白い発光キノコ)も確認でき、

 「アキマドボタル(9月に舞う大陸系のホタル)の観察会も企画してほしい!」との要望もいただきました。

 ホタルの発光周期の違いについて考えたり、キノコが光る理由をいろいろ想像したり、また撮影にチャレンジするなど、楽しみ方は人それぞれ。

 ほとんどの方が、ツシマヒメボタルや光るキノコは初見で、対馬の自然の奥深さに感激したようです。

 こうして、無事、光るキノコ観察会は終了したのでした。

まとめ

 龍良山(たてらやま)は、対馬を代表する照葉樹原始林ですが、縄文時代には西日本一帯がこのような森だったはずです。

 梅雨時には、いたるところでホタルが舞い、キノコが光っていたのかも知れません。

 私たちがふだん見ている森は、薪炭材やパルプ(紙)原料として伐採された後に再生した二次林や、建築材として戦後積極的に植林された杉(スギ)・桧(ヒノキ)などの人工林で、原始林はほぼ残されていません。

 もともと自然の一部であった人類は、科学技術の発達や人口増加により、便利な生活と引き換えに、自然に対して大きなインパクトを与える存在になっています。

 人間の活動によって自然がどう変化したのかを知るためにも、(信仰によって守られてきた)対馬本来の自然を自らの眼で見て、感じていただける観察会を、今後も開催したいと思っています。

今回観察された光る生き物

・ツシマヒメボタル
 (多数。通常は22:00ころが発光のピークですが、20:30からかなり光り始めました。
 →6/24の22:00にはほぼ見られず。龍良山では飛翔時刻が早めなのか、他の要因なのか・・・)
・ゲンジボタル
 (ごく少数。今回は山中で渓流が少なかったのと、発生ピークを過ぎていたため?)
・シイノトモシビタケ
 (多数。まだ傘が開いていない小さい個体も多く、これから増えそう。
 →6/24には1本の倒木から100個体以上が発生していました)
・ヤコウタケ
 (ごく少数。もともと数が少ないのですが、参加者の方が偶然発見しました。
 →6/24には消失。しぼんでしまったのか、食べられてしまったのか・・・)
・アキマドボタルの幼虫
 (下見の際には複数いましたが、イベント終了後、参加者の方が1匹だけ発見しました。
 →6/24には数匹発見。丁寧に探せばまだ見つかりそう)

アキマドボタルの幼虫(黄色い葉の上にいます)

おまけ

スダジイの倒木に発生した大量のシイノトモシビタケ(2024/6/24撮影)
スダジイの倒木に発生した大量のシイノトモシビタケ(上と同じ写真)

 原始林の登山口に行く前に、大量のシイノトモシビタケが発生している倒木が何本もありました。

 対馬の光るキノコについては、まだ詳しい研究や調査が行われてはいないと思いますが、原始林本体をふくめれば、日本有数の光るキノコの発生地なのかもしれません。

謎の光るキノコ(2023/5/31日撮影)
謎の光るキノコ(上記と同じ写真)

 対馬の光るキノコは、シイノトモシビタケとヤコウタケの2種類だと思うのですが、昨年、謎のキノコ(ホシノヒカリタケっぽい?)を撮影しました。

 夜の森を歩けば、光るキノコに限らず、まだまだ珍しい生物が見つかりそうです。

注意点(野外活動全般)

  • 野外活動ではツシママムシなどの危険生物に遭遇する可能性があります(6/24に1匹発見)。また山の気候は変わりやすいため、長靴・長ズボン・長袖、雨具、ヘッドライト・懐中電灯などの装備が必要です。
  • 龍良山は、国有林、国指定天然記念物、鳥獣保護特別保護区、遺伝資源保存林などに指定され、動植物(倒木ふくむ)の殺傷(破壊)・捕獲・持ち出しなどは法律・条令で禁止されています。

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